「手続きがこれで合っているのか不安…」
「社員からの給与計算の指摘が怖い」
「労務トラブルが起きたら、どう対応すればいいの?」
こうした悩みを抱えて社労士との顧問契約を検討する経営者、人事担当者は少なくありません。
ただ、顧問契約といっても内容は事務所ごとに大きく異なり、費用やサービス範囲もバラバラ… 多くの事務所があるなか「どの社労士を選べばいいのか」迷ってしまうのも当然です。
この記事では、社労士事務所に勤務して10年の経験、他事務所との交流で得た生の声を基に、 初めて社労士との顧問契約を検討している経営者や人事担当者向けにわかりやすく解説します。
顧問社労士とは?

社労士との顧問契約は必要か?といわれると必ずしも必要ではありません。
顧問社労士とは、一言でいうと企業が継続的に労務管理について相談できる「かかりつけ医」のような存在です。
労働・社会保険手続きや給与計算代行、労務相談に対応し、会社の労務リスクを減らしながら、企業の労務管理が適正に行えるよう、困ったときにだけ頼るのではなく、日常的に安心するためにサポートする専門家です。
顧問契約のメリットとデメリット

顧問社労士がどんな存在なのかを説明しました。
次に社労士と顧問契約をするメリット、契約前に知っておきたいデメリットを見ていきましょう。
社労士と顧問契約をする3つのメリット

労務トラブルを未然に防げる
労務トラブルや手続き・給与計算のミスはどんな企業にも起こりうる身近な問題です。
例えば、
・残業時間のカウント方法 ・有給休暇の取り扱い ・給与計算方法
など、こうした小さなミスが、後々社員とのトラブルになる可能性はあります。
顧問社労士がいれば、日頃から会社の状況を把握し、トラブルになりそうな部分に対して、的確なアドバイスをしてくれるので、トラブルの芽を事前に摘み取ることができます。
法改正の情報や専門家のアドバイスを受けられる
労働法や社会保険制度は、毎年のように改正が行われます。
企業では、そのすべてを追いかけながら適切に対応することは容易ではありません。
顧問社労士がいれば、企業に関係する最新の法改正情報をタイムリーに受け取ることができ、「どこを直せばいいのか?」「いつまでに対応すべきか?」といったポイントが明確になるため、法令違反や運用ミスによるリスクを大幅に減らすことができます。
経営者・人事担当者が本業に集中する時間を確保できる
手続きや給与計算、労務トラブル対応は、慣れていないと意外と時間がかかります。
「この届出はどこに出すの?」「この手当は割街賃金の基礎単価に入れるの?」「このケースは、有給?休職?」と調べているうちに、あっという間に時間が過ぎてしまうことがあります。
顧問社労士がいれば、わからないことはすぐに相談でき、手続きや給与計算も任せられるため、調べる時間を使う必要がありません。
そのぶん、経営や採用など「本当にやるべき仕事」に集中できるようになることが大きなメリットになります。
契約前に知っておきたい3つのデメリット

顧問料が固定費になる
顧問契約を結ぶことは、専門家を確保する安心感がある反面、コストの固定化につながり、社労士に相談をすることが少ないと「利用頻度の低さ」により、顧問料が割高に感じることでしょう。
ただ、相談事項が少ないときにこそ、現在の労務管理を見直す良いタイミングでもあります。
「今の運用で問題はないか」といった視点で相談してみるのもおすすめです。
顧問範囲外は追加料金がかかる
顧問社労士に依頼できる業務には、あらかじめ決まった範囲があります。
その範囲を超える業務が必要になると、追加の費用がかかる場合があります。
契約前に「どこまでが顧問契約の範囲なのか」を明確に確認しましょう。
社労士によって対応レベルの差が大きい
社労士にも得意分野や経験値の違いがあります。
労務トラブルへの対応力や法改正のキャッチアップ力、改善提案の内容などは事務所ごとに差が出やすいポイントです。
料金だけで判断せず、実績や対応できる業務範囲の確認が大切です。
顧問社労士の業務内容を解説!

社労士の業務は社会保険労務士法により定められており、法律上「1号業務」「2号業務」「3号業務」の3つに分類されています。
それぞれの業務を知ることで、社労士に何を依頼できるのかのイメージをしましょう。
では、3つの業務内容について解説します。
(全国社会保険労務士会連合会より参照:https://youtu.be/zOKuMqTTmHA)
書類作成と提出代行業務
ひとつめは社労士の独占業務でもある「1号業務」です。
1号業務とは、労働社会保険諸法令に基づき行政機関に提出する申請書を作成する書類作成と申請書について、その提出に関する手続きを代行する提出代行の業務があります。
<代表例> 雇用保険・健康保険・厚生年金保険の資格取得や喪失手続きなど 雇用保険の育児休業給付金や社会保険の傷病手当金など各種申請書の作成・提出など 労働保険の年度更新や社会保険の算定基礎届の作成・提出 企業に対する助成金の申請 など
事務作業の負担を大きく軽減できるため、多くの企業が社労士に依頼している中心的な業務です。
帳簿書類や就業規則の作成業務
2つめは1号業務同様、社労士の独占業務である2号業務です。
具体的には、「労働者名簿」「賃金台帳」「出勤簿」といった法定帳簿の作成や就業規則や各種労使協定書の作成です。
労務相談・コンサルティング業務
3つめは3号業務です。
企業の労務管理全般に対して、専門家としてアドバイスをする業務です。
<代表例> 労務トラブルの相談対応 労働時間管理の改善 人事評価制度・賃金制度の構築支援 労基署の調査対応のアドバイス など
3号業務は、社労士の実務経験や専門領域が最も表れる業務であり、企業の労務リスクを減らし、社内の制度を整える役割を担う、経営者や人事労務担当者に対して最も価値を提供できる業務です。
顧問社労士の選び方“6つのポイント”

「社労士を探しているけれど、どう選べばいいのかわからない」
そんな経営者や人事労務担当者の方も多いのではないでしょうか?
ここでは顧問社労士の選び方を6つのポイントに分けて、わかりやすく解説します。
得意分野
社労士にはそれぞれ得意分野があります。
例えば、労務トラブル対応に強い社労士、助成金申請に特化した社労士、手続きや給与計算の大量処理に対応できる社労士など、社労士事務所のスタイルはさまざまです。
企業が解決したい課題と社労士事務所のスタイルが一致しているかを確認することで、より的確なサポートが受けられるでしょう。
業界経験
同じ労務管理でも、業界が違えば必要な知識や業界独自の慣習は大きく異なります。
例えば、建設業や運送業のように労働時間管理が複雑な業界、飲食業や小売業のように離職率が高い業界、保育業や介護業のように人手不足の業界など、それぞれの特徴があります。
自社と同じ業界での支援実績のある社労士や業界特化型の社労士なら、業界知識もあり、提案内容の質も高くなります。
対応範囲
社労士が提供できるサービスの範囲は事務所によって異なります。
手続きや給与計算の大量処理が可能な事務所 労務相談や労使トラブル対応を強みとしている事務所 人事制度設計や就業規則の改定などのコンサルティング業務に対応できる事務所
といったように、事務所によって対応範囲はさまざまです。
顧問契約を検討する際は、「どこまで対応してくれるのか?」を明確に確認しておきましょう。
レスポンス(連絡手段)
労使トラブルは緊急性が高いケースも少なくありません。
また、トラブルが起きたときにこそ、すぐに相談して安心を得たいと思うのではないでしょうか?
そのために、レスポンスの早さや、連絡手段(メール/電話/チャットなど)は重要なポイントです。
自社の求めるスピード感と社労士側の対応体制やスピード感が合っていないと、トラブル対応に遅れが生じる可能性があります。
「平均的な返信時間」「社労士事務所の担当者が不在だった場合の対応」などを事前に確認しておくと安心でしょう。
組織体制
2024年度の社労士実態調査では、社労士事務所の平均従業員数は、2.7人であり、1人の割合が56.4%と半数を超えています。
一方、従業員数21人以上の事務所は0.9%であり、全体の事業所数から換算すると、約248事務所ということになります。
このようにさまざまな規模の社労士事務所が存在します。
個人事務所は、小回りの利く、丁寧な対応が期待できます。
逆に従業員数の多い事務所は、業務の分担やバックアップ体制が整っていて、ミスの防止や大量の業務処理に適しています。
自社の求めるサービス内容が提供可能な事務所なのかを見極めることが大切です。
デジタル化
最近は労務管理の現場では、クラウドシステムや電子申請が急速に普及しています。
そのため、社労士事務所がどれくらいデジタル化に対応しているかは、企業にとって重要なポイントです。
デジタル化に強い事務所なら、書類のやり取りがスムーズで、申請書の提出も電子申請で完結するため、紙を印刷、郵送する手間が減るため、企業側の負担も軽くなるでしょう。
紙ベースでの作業が多い事務所だと、どうしても作業に時間がかかり、ミスが起きやすくなることもあります。
デジタル化に対応しているかどうかを見極めるために、次のポイントを確認しましょう。
電子申請に対応しているか クラウド型の勤怠・給与。労務管理システムに慣れているか 書類やデータをオンラインでやり取りできる仕組みがあるか 情報管理やセキュリティ体制が整っているか
最近ではサイバー攻撃によって、システムが突然使用できなくなるケースへの対応策も必要になります。
社労士事務所が使用しているシステムがサイバー攻撃を受けた場合の社労士事務所側の対応はどのような対応なのか、確認しましょう。
まとめ

顧問社労士は、会社の「かかりつけ医」のような存在です。
トラブルが起きてから対応するのではなく、未然に防ぐための相談相手として活用できます。
顧問契約には、
・労務トラブルの予防
・法改正へのスムーズな対応
・経営者や人事担当者が本業に集中できる環境づくり
といったメリットがある一方で、
・顧問料が固定費になること
・対応範囲や社労士ごとの対応力の違いなど
事前に知っておきたいポイントもあります。
また、社労士の業務は「1号・・2号・3号」に分かれており、
特に3号業務(労務相談・コンサルティング)は、社労士の経験や強みが大きく表れる分野です。
顧問社労士を選ぶ際は、
得意分野や業界経験、対応範囲に加えて、
レスポンスの早さや事務所の体制、デジタル化への対応状況も確認しておくと安心です。
「顧問契約を結ぶかどうかを急ぐのではなく、」
「自社の労務を安心して任せられる相手かどうか」という視点で考えてみましょう。
この記事を参考に、自社に合った社労士を見つけるための第一歩として、情報収集や社労士への相談から始めてみてください。
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